CHILD HOUSE
社会福祉法人 地球の子ども会
MONTESSORI-METHOD
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ちゃいるどはうすは森のようちえん会員で、園内外で自然体験プログラムを導入。園内では、稲作、畑、実のなる木々、自然素材に拘った遊具。また、園バスで、自然を探しにあちこちに出かけます。
『森のようちえん』の活動とは
森のようちえんとは、自然の中での幼児教育を行う活動や団体を指します。
森のようちえんには3つのタイプがあり、毎日のように森などに出かける「通年型の森のようちえん」。幼稚園や保育所が年間に数回から数十回程度、森へ出かけるような「融合型の森のようちえん」。団体が、イベント的に実施する「行事型の森のようちえん」もあります。
現代の社会を見ると子どもをとりまく環境は一段と厳しさを増しています。車社会、ゲーム、子どもが巻き込まれる事件の増加。安全に遊べる場所が激減しており、幼児の自然体験をはじめとする体験活動の欠如が指摘されています。
乳幼少期の子どもたちの学びは子ども自身が自分の身体をフルに使って感じる事が大切で生の多様な体験の場が必要です。自然の中で子どもが感性を研ぎ澄ませ、自然との関わりを通して学ぶことが重要で、それを土台に全人格の形成をしていくといっても過言ではないでしょう。
森のようちえんの活動は北欧諸国で始まった野外活動ですが、日本でも恵まれた自然環境を利用して様々なスタイルの活動が行われています。それぞれ運営者独自のスタイルの中に、いくつかの共通点があります。
1.「森のようちえん」とは
自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称
2.「森のようちえん」という名称について
【森】は森だけでなく、海や川や野山、里山、田畑、都市公園など、広義にとらえた自然体験が出来る場所の事。
【ようちえん】は幼稚園だけでなく、保育園、託児所、学童保育、自主保育、自然学校、育児サークル、子育てサロン・ひろば等が含まれ、そこに通う0歳から概ね7歳ぐらいまでの乳児・幼少期の子ども達を対象とした自然体験活動の事。
まとめると、自然体験が出来る場所で活動する事又その団体の事。
ちゃいるどはうす森のほいくえんの主な自然活動
<園庭での活動>
1300坪の敷地の中は1年中季節を感じる事が出来るよう自然の営みに合わせ構成されています。
1年を通して畑の活動 。土作りから収穫まで手作業で行う稲作。実のなる木のゾーンでは木から直接実をとって頬張る子どもの姿。食物連鎖や動植物の生態がわかるビオトープ。食育を関連付けて植えられたハーブガーデン。蝶々がやってくるバタフライガーデン。様々な素材で出来た道の間に季節の草花が咲く小道ガーデン。3種類のガーデンのお世話も子どもたち自身でしています。
芝が張られた3mを超える築山、本物の石がはめ込まれたクライミングウォール、どんぐりがなるツリーハウスはアスレチックも楽しめます。そんな自然素材の大型遊具の周りには沢山の草花が自然に咲きます。春にはつくしやフキノトウが顔を出し、おやつに登場します。夏に採ったスギナは炒ってお茶になります。秋、真っ赤に色づいたほうき草は乾燥させてほうきになります。晩秋には時間をかけて出来上がった米と畑で出来た10種類以上の野菜を収穫して収穫祭。冬の大根を抜き終わると土づくりをして春を待ちます。落ち葉拾いや石拾い、小枝拾いは最高の活動です。それらを分類して廃材置き場に収まるとその素材でアートや工作の活動が始まります。子ども達は園内の環境の中で場所や活動を自由に選ぶことが出来ます。自由を保障された子ども達の耳にはどこからともなくギターやエレクトーンの音色が聞こえてきます。
<近隣公園での活動>
『偕楽園』『植物公園』『森林公園』等の自然散策で動植物との触れ合い。
私たちの暮らす地域には自然に触れる事が出来る安全な場所や歴史ある公園が沢山あり、園で体験できないことに触れる事が出来ます。専用のバスに乗って月に3回程度小遠足気分で出かけます。お外で食べる昼食は格別です。
<園内活動との繋がりあい>
野外での自由な活動の中で触れたり感じたりしたことに子どもは興味を示し疑問を持つようになります。「この花の名前は?」「この卵は何の卵?」「オタマジャクシは魚じゃないの?」「なんで?」「どうして?」ちゃいるどはうす森のほいくえんのお部屋の中にはそれらの様々な個々に違った興味に寄り添う環境が準備されています。何でもかんでもあるわけではありません。子どもが触れたり目に留まるであろう身近なものが制限され多すぎず少なすぎず準備されています。その中で<園庭での活動>や<近隣公園での活動>で抱いた不思議を解明できるようになっています。
一般的には広い制限のないスペースで自由に飛び回る事が子どもは好きだと思われがちですが、子どもが本当に望んでいるのはある程度の制限です。全ての生物は自分の場所を限定しその境界内に身を置く傾向があるようです。これは生きる上での生活の場を考える時にも適応できます。制限範囲は過度であれば子どもの意識が定まらず目に入ってきませんので目の前の事に気づくことが出来ません。反対に少なすぎれば満足できません。その為
適度に制限された環境が大切です。適度に制限された整えられた環境の中での様々な経験が実際に活きた(生きた)ものになって子ども自身のものになるようお部屋の中での活動と繋がりを持たせています。それにより、相互の活動がより充実したものになります。
森のようちえんの活動を導入するにあたり、
ベースにあるのはモンテッソーリ教育の考え方
ちゃいるどはうすは保育内容の5つの領域を達成するために、25年前から『モンテッソーリ教育法』を導入してきたました。
そして子どもが自分で育つ力を信じ様々な体験が出来るよう環境を整えてきました。発達のプロセスは決まっていても個々の興味関心は多様である事を感じてきました。しかし多様でありながらも子どもが発達を遂げなければならない課題は共通しています。
運動の獲得。言葉の獲得。意志の発達。知性の発達。社会性の発達。感覚の発達等です。
それらの発達の課題を獲得していくのは、大人が教えて獲得していくのではなく、子ども自らが自分の体を使って感じて動きを通して発達していくというものです。このベースになる考え方は、マリアモンテッソーリが100年以上前に子どもを観察し子どもから発見したことですが、現在は、医学や科学が進歩し子どもの育ちの土台はその通りであることが、共通の考え方になりました。
一昔前は近くの公園や空き地で自由に遊ぶ小さい子ども達の姿も目にしていましたが、最近は小さい子どもが子どもだけで遊ぶ姿は見かけなくなりました。小さい子どもが巻き込まれるような事故や事件が増加し自然に触れ自由に遊ぶことは出来ない時代になったのでしょう。そんな時代になってしまっていますが、しまっているから余計に自然体験の重要性がクローズアップされるのだろうし、それは仕方がない事でしょう。
『森のようちえん』を一言で表すと、自然体験が出来る場所で活動する事又その団体の事です。こうでなければならないという定義はありません。その為実にシンプルで伝えやすいし伝わりやすいプログラムであると思います。
その反面、当園で導入しているモンテッソーリ教育法は日本での伝わり方には誤解も多く、自然活動はモンテッソーリ教育ではないと思っている方々も沢山いるのが現実です。
マリアモンテッソーリ自身が1948年に書いた『子どもの発見』という本は彼女が子どもを観察し達した結論を表した本ですが、そのまえがきにはこうあります。『今や時代は変化しました。科学は大きな進歩をとげ、私たちの仕事もまた進歩しました。実際、私たちの原理は正しいと認められました。』
そして、その本の4章に『教育における自然』という章があり翻訳された本では14ページにわたり、自由な自然の必要性、畑の活動、動植物との関わりなどが具体的に書かれています。しかし、モンテッソーリ教育法は感覚に訴える教具が有名である為、それらの教具を使う部分と使い方を提供するときのゆっくり分析した、秩序正しい動きが異様に映り誤解を受けてしまうことも多いのでしょう。
一度偏った偏見をもたれ誤解されてしまうと、その誤解を解くのはなかなか難しい問題です。
その為、自然活動の説明するときに『自然体験が出来る場所で活動する事で、こうでなければならないという定義のない森のようちえんというプログラム』という説明はシンプルで伝えやすく伝わりやすいようです。
私自身の中では日本の乳幼児教育に求められている事や、文化を背景にモンテッソーリ教育法を偏りなく全体的に捉え出来る事を実践しているだけです。
自然活動の大切さ、方法については『モンテッソーリ教育』も『森のようちえん』も
共通しており、何も違いはありません。違いはそこに『どうして必要か?』という科学的根拠があるかないかでしょう。森のようちえんは活動そのもののことを言っている為、科学的根拠については示されてはいませんがモンテッソーリ教育法は子どもの育ちから証明しています。
このプログラムを実践するにあたりドイツで森のようちえんを実践しているWaldkindergarten Friedrichsdorf
forest-kindergarten in St. Thomas church in Frankfurt
という2つの幼稚園のプログラムに数日間同行させていただきました。どちらの団体も決まった管理されている森に出かけていき半日を過ごしてくるというプログラムでした。丸太に腰かけ朝の会を行い軽食を取り自由に自然と関わりだします。枯葉のベットに寝ころぶ子ども、のこぎりで丸太を切る子ども、絵を描く子ども、一輪車で枝を運ぶ子ども、水たまりで泥んこになる子ども・・・自由を保障され子どもが主体的に森に関わって行く姿には力強さを感じました。先生方は大きな危険がない限り、子ども自身に任せ穏やかにのんびりしているように伺えました。
日本に戻り森のようちえん全国ネットワーク主催の『森のようちえん指導者養成講座』に参加させて頂き日本における森のようちえんの概要、活動構成、保育者の役割、運営の基本、安全管理の考え方を内田幸一先生から学ばせて頂きました。先生自身の実践経験からのお話にとても共感できました。
園に戻り本格的にモンテッソーリ教育の自然と森のようちえんの考え方を照らし合わせ整理しました。そして園舎園庭を相互に関わりが持てるよう繋がりを持たせ整備しました。
子どもが関わりやすい適度な制限のある自然環境は決して既製的ではありません。農振地区の中に建てられた園の周りはほとんど田んぼです。その為自然をそのまま生かし自然の営みに合わせ構成することが出来ました。田んぼの時期には大きな白鷲がカエルを食べにやってきます。毎日同じ時間に同じ場所を歩くセキレイ、園のあちこちに作られた鳥の巣から巣立ちの様子を見せてくれるツバメの親子。真ん前にある乗馬クラブの馬たちは隣の牧草地に毎朝草を食べにきます・・・
これからもこのような恵まれた環境を活かし、科学的根拠に基づくモンテッソーリ教育法の考え方をベースに森のようちえんのプログラムを実践していける環境を維持しつつ、整えていく事が楽しみでなりません。